2015 年 ブドウの収穫 (ブドウの収穫番号 32)

今までにない収穫、再び

みなさまへ

まず初めに、2014年の収穫について記した最初の段落を読み返してみたいと思います。

今までの経験から、収穫時期の天気、やらなくてはならなかった仕事量の多さ、醸造段階で採用する方法などを考慮すると、

2014 年は今までになかったブドウの収穫と言っていいでしょう。

私たちの子供や孫の世代に「たくさん働いた」と胸を張って言える年でした。

さて、2015年の出来事を振り返ってみると、実に「人生とは常に学習だ」と改めて思うところです。

新たな困難が立ちはだかり忍耐が必要なこともありますが、人間とはいかに困難な状況にも適応する能力を備えているものです。

2015年の夏は日中の気温が 36 度を超え、夜でも 20 度を下回る日は稀であったほどで、ベルティノーロ史上記録的な暑さと雨の少ない夏だったと言えるでしょう。

収穫間近になるとメディアにはその年の収穫予想が飛び交い、良くも悪くも大抵が素晴らしいものばかりです。

インタビューや記事があふれる中、誰もが大げさに予想を語ります。

私にとって予想を語ることはいつでも容易 なことではないのですが、2015年のよう に特別な天候を経験した年はより一層難 しいものです。

確かに、乾いた土壌に雑草は生えず、うどんこ病やべと病の発生も少なかったために薬剤散布なども少なくて済み、結果として労働時間も抑えられました。また、雨に悩まされることもなく気持ちのよい収穫ができました。

これだけ見ると、すべてが上手くいって誰もが幸せのようですが、経験から言えば世の中に完璧など存在しないものです。

なによりも、雨の少ない天候によりブドウの収穫量は20~25%少なく、糖度が大幅に高まり酸度が低くなりました。

気温が33度を超えると光合成が低下・阻害される傾向にあり、結果としてブドウは成熟しにくくなります。また過剰な直射日光や高温は果粒が日焼けを起こしやすくなるなど、様々な問題があります。

難しい天候に直面した今シーズンも、ブドウに日陰を作る枝を伐採せずに通気性を確保する方法を模索するなど、多くの手をかける必要がありました。

さらに、十分なpH・酸度を確認できたことで収穫を早めただけでなく、ブドウの成長に最適とは言えない気象条件で育ったことにより含有量の少ないモノテルペンを維持するべく醸造にも慎重を要しました。

弊社の半世紀に渡る妥協を許さないワイン造りと経験を駆使し、今年もこれまでと変わらず当地方独特のワインをお届けすることができると確信しております。「今までにない収穫の年」の味わいを十分堪能していただけることでしょう。

次回もまた良いお知らせをお届けできることを心より願っております。

Mauro Sirri  マウロ・シッリ